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第2章 1

その日を境に彼は避妊具だけは欠かさないようになった、

いくら、私が快楽の中で懇願しても彼は、ダメ、と一言言ってつけるようになった、

その変わり。彼は私の欲望にはなんでも答えた。

私が挿入よりも壊れるまでいじって欲しいと言うと彼はその通りにしてくれたのだ。

キスからクリまで。甘く甘く躾けるように。

私がもう、むり、いれて、いれてって懇願するまで。

セックスの中で覚えてないけど私はよく彼に殺して、と乞うらしい。

そう叫ぶたびに彼は私の首に手を当てている。力は決して入れないように。ポーズだけ。それだけでも満足気に果てているみたいだ。

「死なないでね」

情事が終わり、抱き合ってる時に囁かれた。

「……」

返事に戸惑う私を強く抱き締めて、彼は眠りにつく。彼の言葉が呪文のように耳から離れない。

「あなたを置いて死ぬわけ、ないじゃないですか」

己に言い聞かせるように小声で呟く。自信が無い、でも、この人と甘い時間を過ごすには生きなきゃいけない。

ふと、自分の首に両手を当ててみる。すぐに怖くなって離す。

死への恐怖、それと共に湧き上がるのは憧れ……?


死ぬのは怖いくせして、死に憧れる私の矛盾。

変なの……


そんなふうに思いながら私は彼の腕の中で目を閉じる。

夢は見ない。いや、見ても忘れてしまうのかもしれない。

私が見る夢は悪夢しかないから。

悪夢を長く覚えられるほど私の神経はずぶとくないらしい。

それでも、たまに魘されて彼を酷く困惑させる。

「ももちゃん??ももちゃん?」

彼の眠りを妨げてしまう自分に嫌気がさして。また、謝る、彼が微笑む。

「大丈夫だよ、大丈夫」

君は、なにも、悪くない。

そう言われて私は泣いて、彼は泣き止むまで何も言わずに見守ってくれる。

その繰り返し。

優しい彼は私をずっと、守ってくれる。

大好きだよ、その言葉だけ心が満たされる。必要とされてる、それだけで。

「凡さん、今日はね、ギューってしててください」

あるとき、そんなオネダリをしてみた。彼の暖かい体温に包まれたくて。

「それだけでいいの? 」

にこやかに尋ねられて決心が揺らぐ。彼の少しふっくらした指に触れられたい、赤くチラつく舌で嬲られたい……。

彼は私の方をクルッと向くと、おいでと身体を引き寄せられる。



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