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能里子見聞録

第1章 紺色のワンピース

 男友達の太郎君(仮名よ)のお話なんだけどね。

 太郎くんに彼女がいるの。将来を誓いあった仲らしいわ。

 そして、友人に次郎君(仮名よ)がいるの。次郎君にも彼女がいるの。
 
 太郎君と次郎君は同じ会社の同僚。次郎君の彼女は、太郎くんの部署の後輩ちゃんだった。

 たまたま後輩ちゃんを見た次郎君が一目惚れしちゃって、仲を取り持ってくれって太郎君に頼んで、それで上手く行ったみたいなのよね。

 まあ、そこまでなら、良く有る話かもしれないわ。

 でもね、ちょっと違うのよ。太郎君が言っていたわ。

「実はさ、能里子(面倒だから、後輩ちゃんをそう呼ぶわね)って、オレに惚れていたんだよな。その時はすでに彼女がいたんだけどさ、『それは知っているわ。でも、自分が抑えられないの……』なんて言うんだ。うるうるした瞳でさ…… もう、これは人助けだと思ったよ」

 太郎君、何を言ってるんだか! 下心見え見えじゃないの!

 能里子は彼女とはタイプが違っているって言うのも引き金になったみたい。

 彼女は小柄で肉感的、能里子は背が高くてほっそりしているの。

「でさ、彼女が出張(彼女さん、別の会社なのね。結構優秀なんですって)の時に、マンションに呼んだんだよ。そしたら来てくれてさ…… オレは兎も角、能里子はすっかりその気なんだ。『何度も言うけど、オレには彼女がいるし、その彼女と結婚する予定なんだ』って言ったんだけどさ。『いいの。抱いてほしい……』なんて言ってさ、抱きついて来るんだよね。うるうるした瞳でオレを見つめてさ……」

 で、結局は抱いちゃったわけ。

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