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艶的日本昔話

第3章 節分の鬼

 じっとりと汗ばみ、肩で荒々しく息をしているとみは、褌を締めなおしている鬼を艶っぽい目で見上げていた。

「お前様……」

 とみは鬼に語りかけた。

 鬼は金棒を拾い上げながら、とみの顔を見返す。

「何故わたしを……?」

「前にお前を見かけてな。川で洗濯をしておった時じゃ。良い尻をしておった。それで、欲しくなった」

 ぶっきら棒な物言いの鬼に、とみは艶めかしいし眼差しを送る。

「お前様……」

「なんだ?」

 鬼は面倒くさそうな顔をとみに向ける。

「また来て下され…… 明日にでも、また……」

 とみは縋るような目を鬼に向ける。

「明日は無理じゃ」

「では明後日……」

「それも無理じゃ」

「来週では……」

「駄目じゃ」

「せめて来月……」

「駄目じゃ、駄目じゃ。ずうっと駄目じゃ」

「ならば来年までも待ちまする!」

 とみは懸命な面持ちで言った。

「来年……?」
 
 突然、鬼が笑い出した。

「来年の話をすると鬼が笑うと言うのを知っておったか! 楽しい奴じゃ! わはははは!」

 そう言うと、鬼は笑いながら持っていた金棒をとみの上に振り下ろした。





                      おしまい
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