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墓守は眠らない

第1章 三日月の章

 夏の夜風は生暖かい。
 どこから入ってきたのか、耳元では蚊の鳴く音が響き、何度払いのけてもまとわりついて離れない。


「あ~もうっ、鬱陶しい!」


 ワンピースを着た女が首元をかきむしりながら言い放つ。蚊に咬まれた場所は首元に限らず、肌が露出する腕や足や胸にもあった。


「ねえっ! やっぱりこんな場所じゃなくてホテルに行きたいんだけど……あぁんっ」


女は文句を言いながらも、度々迫ってくる快楽に身を委ねる。


「もう我慢できないって、誘ってきたのはお前だろ」

「そうだけど、なんでお墓のそば……あんっ! らめぇっ、そんなに吸っちゃ……」


 若い男女は墓地のそばに車を止めて、カーセックスをしていた。


「ここだったら滅多に車通らないし、どれだけ喘いでも誰にも聞こえない、墓地のそばってのは案外穴場なんだぜ」

「確かに声出せるのはいいけどぉ……ねえっ、さっきから何か聞こえない?」


 女はしきりにあちこち周りを気にする。


「お前の喘ぎ声がうるさくて何も聞こえねーよ。ほら、もっとケツあげろって。奥まで突いてやるから……」


 その時だった。
 突然「バンッ!」と何かが車のボディにぶつかった音が二度響いた。



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