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デーモンハント

第3章 契約

契約をするというエルザの叫びを聞いたコートの男は、肩を震わせて笑う。

「馬鹿な真似は止めなさい、お嬢さん、どう足掻いても、貴女は偉大な方の物になるのですから」

そう言われ、エルザはぎゅっと唇を噛む。
柔らかな桃色の唇に、じわりと血が滲んだ。

「俺はソレル、お嬢ちゃん、貴女の名前は?」

黒髪の男がソレルと名乗り、優しい眼差しをエルザに向ける。
エルザは涙を目に一杯ためながら、口を開いた。

「アタシはエルザ……エルザ・クレイソン!」

吐き捨てるように名前を言ったエルザに、ソレルは頷く。
そしてだらりと垂れ下がった自分の腕に触れた。
すると腕が正しい形に戻り、コートの男は目を見開く。

「馬鹿な、この牢屋の中で私以外の者が魔力など使えぬはず!」

男が慌てた様子でソレルを見ると、ソレルは鉄格子をすり抜けて牢屋の外に出てきた。
エルザは驚き、目を丸くする。

「使えますよ、魔力。俺、変わった体を持っていますので」

ソレルはそう言うなり、コートの男の隣を駆け抜けた。
そしてソレルが立ち止まった時、コートの男が担いでいたはずのエルザは、ソレルの腕の中に抱かれていた。

「何?」

コートの男が驚きのあまり声を漏らす。
状況が掴めずエルザがぽかんとしていると、ソレルはそっとエルザに顔を近付けた。

「へ?」

驚くエルザの唇をソレルは優しく舐め、滲んだ血を舐めとる。
突然のことに、エルザはただ呆然としていた。

「契約完了です、エルザ、何なりと命令を……俺ができる事なら何でもしますよ」

ソレルが言う。
エルザは何を命令すればいいのか分からず、口をぱくぱくとさせた。

「逃がすわけにはいきませんよ、その手を離しなさい、コソドロ!」

コートの男は、そう言うなりソレルに向かって走り出す。
恐怖を感じたエルザは、思わず叫んだ。

「お願い!助けて!」

ソレルの首に腕を回し、しがみつく。
そんなエルザを強く抱き寄せ、ソレルは壁に背中を当てた。
するとソレルとエルザの体は壁の中に吸い込まれる。

エルザは強く目を瞑って、腕に力を入れた。

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