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デーモンハント

第3章 契約

目を閉じながら、エルザは不思議な感覚に包まれていた。
シルクの布が素肌を撫でるような、初めての感覚だった。

その感覚が無くなると、冷たい風が肌に触れ、エルザはそっと目を開く。

最初に目に入ったのは、ソレルの美しい、ルビーのような赤い瞳だった。
ソレルはエルザの視線に気付くと、優しい笑顔を見せる。

「しっかり掴まっていてくださいね、エルザ、彼らの城からできるだけ離れますから」

ソレルに言われ、エルザはこくんと頷く。
ソレルに掴まりながらエルザはやっと周囲の景色に目を移した。
頭上には黒い雲が広がり、雲の隙間から赤い空が覗いている。

下の方には不気味な黒い木々の生えた森があり、エルザは気付いた。

「と、飛んでる!」

エルザが叫ぶと、ソレルは「そうですね、飛んでますね」とのんびりとした口調で言う。

「……ソレルさん、空を飛べるなんて、貴方本当に悪魔だったのね」

そう言ったエルザの声は、驚きと高さへの恐怖で震えていた。

「はい、悪魔ですよ、人間界にも悪魔は多いですから、珍しくも無いでしょう?」

ソレルに言われ、エルザは口を閉じる。
確かに、エルザが住んでいる街でも悪魔の噂は絶えない。
悪魔信仰も盛んなため、邪教徒の摘発なども度々されている。
しかし、本物の悪魔に出会ったことが無かったエルザにとって、悪魔という存在はどこか非現実的な物だった。

「あの辺で良いですね、降りますよ」

ソレルに言われ、エルザは頷いた。
抱き抱えられながら、エルザはソレルの顔を見つめる。
同じ悪魔だというのに、あのコートの男とソレルは全く違う雰囲気だと、そう感じていた。

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