ほしとたいようの診察室
第8章 入院生活は続く
叶恵さんがお盆を持って、病室に入ってくる。
「のんちゃん、おはよう。朝ごはん持ってきたよ」
叶恵さんの明るい声。でも、何も食べたくなくて、じっと布団にくるまる。
「おはよう……叶恵さん、ご飯いらない」
布団の中で起きもせずそう呟くと、叶恵さんはそんなわたしをじーっと見つめているみたいだった。
食事をテーブルに置く。カタン、と小さく音がしたあとに、叶恵さんはわたしを覗き込んで言った。
「いまは食べられない感じかな? 午前中の大海先生の診察と……ホルモン剤の調整が不安だから?」
心の内を言い当てられて、素直に頷く。
「……うん」
叶恵さんは朝食のお盆を見て、考えていた。
「うーん、そうだね……何か一つだけでも完食しようか。お味噌汁でもご飯でも。それから薬飲めればいいかな」
「……」
それもできなさそうで、わたしは黙り込む。
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