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ほしとたいようの診察室

第3章 お仕事&お仕事


そうして始まった初日は、怒涛の勢いで過ぎていく。


ランチの時間はやはり、食堂の利用者数も多く、目が回るようだった。


「A定食、売り切れるよ〜!」

「星川さん、付け合せの野菜刻んどいてくれる?」

「倉野さん、洗い物お願い!」



「あ! 2人ともやり方わかる? 教えるよ!」



大河さんは司令塔になりながら手を動かし、
わたし達に逐一やることを指示する。

坂井さんは右往左往するわたし達をフォローしながら、何人分かわからない仕事をテキパキこなしていた。



言われるままに手を動かし、体を動かしていたら、あっという間にピークの時間帯が過ぎた。

「疲れたでしょ、ちょっと休みな。ね、いいよね、大河さん!」

坂井さんが言いながら、飲み物をわたし達に渡す。
面倒見の良い教育係のようなポジションなのか、気さくでよく気にかけてくれた。



「「ありがとうございます」」



短い休憩を言い渡されたわたしと倉野さんは、厨房の隅の椅子に座って、一息つく。


「……あっという間だったね」


飲み物を口にしながら、倉野さんがわたしに声をかけてくれた。


「ほんとだね……大変だったなぁ」


つぶやくように応えると、静かな時が流れた。
昼時を過ぎると、食器を洗う音がよく響く。



「倉野さんは、バイトとかで調理してた?」

控えめに訊ねると、倉野さんが笑った。


「ーー小夜でいいよ。うん、卒業前に少しだけね。飲食店でやってたんだけど、勝手が全然違う」


「じゃあ、小夜ちゃんで……。そうだよね、慣れるまで大変かも……」




名前で呼ぶのが少し恥ずかしくなって、座っていた足元、

つま先を見つめた時だった。




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