
ほしとたいようの診察室
第3章 お仕事&お仕事
「ねえねえ、知り合いの先生?」
倉野さんーー小夜ちゃんが、肘でわたしをつつく。
なんの事か分からなくて顔を上げると、視線の先、カウンターの向こう側に、笑顔で手を振る人がいた。
「……あわ、よ、陽太先生……!」
授業参観で親に手を振られる感覚が蘇って、頬が火照る。
どうしていいかわからず……これまた小さく手を振り返した。
陽太先生は、遅めの昼ごはんの常連らしい。
大河さんとも話しながら、カウンターで食券を渡す。
「あれ! 陽太先生、星川さんと知り合い?」
「ふふ、そんなとこです。昔、のんちゃんの主治医をしてました」
「あら〜! 感無量でしょ!」
「それはもちろん」
屈託なく笑いながら話す2人の会話が耳に飛び込んで、また俯いて、もじもじしてしまう。
恥ずかしいような、嬉しいような。
隣にいた小夜ちゃんが、にこにこしながら、わたしに囁くように言った。
「星川さん、わたしものんちゃんって呼んでいい?」
なんだか、その状況を楽しむように。
でも悪い気はしなかったから、わたしはこくりと頷いた。
