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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く


ナースステーションをそっと覗くと、蒼音くんがいた。胸のポケットには小さなぬいぐるみを入れているのに、他の看護師さんと喋っていることは難しい単語が飛び交っている。

蒼音くんはわたしを見つけると、少し驚いてから、笑って手を振った。
不思議そうにしている他の看護師さんには、

「ここの卒業生です」

と、一言残すとわたしに駆け寄ってきた。


「どうしたの、のんちゃん。珍しいね」


蒼音くんは笑顔を見せる。わたしは小さく挨拶をして、俯いた。
なんて言ったらいいんだろう。思いつきで来たから、素直な気持ちを口にするのが恥ずかしかった。


「陽太先生? 優先生? それとも、プリン?」


もう子どもではないわたしにも、蒼音くんは目線を合わせるように中腰になってそう言った。

わたしは思わず笑ってしまう。

「プリンじゃないよ」

そう言い返すと、蒼音くんも笑う。

「ほら、小さい時。食堂のプリンは1人で食べに行けなかったから」

蒼音くんが冗談めかすようにそう言ったから、2人で笑ってしまった。蒼音くんは、わたしのことを食堂によく連れて行ってくれていたから、懐かしい。


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