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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く


中庭に出ると夏の日差しが降り注いでいた。

日陰にいくつかの人影があるが、歩いている人は少ない。
冷房のよく効いた室内から外へ出ると、一瞬クラッとするような暑さだった。

「暑い……」

「うわ、夏だねぇ。大丈夫? しばらく外出てなかったでしょう?」

「はい……」

陽太先生は日差しに身を晒しながら、太陽の方角へ顔を向けた。
白衣が光を反射して、陽太先生が光っているみたいだった。太陽に包まれた陽太先生は、健康的でお日様の匂いがしそうだった。

わたしは、陽太先生の作っているその大きな陰に隠れていた。暑くて敵わないのだ。

でも。

「気持ちいいです」

大きく伸びをした。外で体を伸ばすのなんて、いつぶりだろう。

白しかない病院の色に慣れてしまった目は、緑を目一杯に吸収した。
風が吹く。
新しい空気を運ぶ風は、涼しく頬を撫でていった。

「木陰に座ろうか」

木陰にあったベンチに、2人で腰掛ける。
草原にある木陰のベンチは日向よりも涼しく、温度がちょうど良い。
じんわり吹き出た汗をハンカチで拭うと、陽太先生がスポーツドリンクのペットボトルの蓋を開けて、渡してくれた。

「これ、ちょっと飲みなね」

お礼を言いつつ、一口飲む。
蝉が盛んに鳴き、入道雲が遠くにもくもくと膨れ上がっている。
外に出ない間に、すっかり夏は盛りに入っていた。


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