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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く


こんなふうに、横並びで座って陽太先生と話すことって、案外なかったかもなぁと思う。
だって入院してからは、ベッドとベッドサイドの椅子である。ロマンスも何もない。

風になびく陽太先生のふわっとした前髪と、鼻筋が通った横顔をこっそりと見上げて見ていた。じっと前を見ている陽太先生が、思い出したように声を上げた。





「あ、そうだ。これは覚えてるかなぁ」



おもむろに陽太先生が懐を探ると、出てきたのは古い栞のようだった。
陽太先生の手元を覗き込んで、呟く。


「栞?」


陽太先生が、それをわたしに手渡した。
ラミネートされた栞には古いシロツメクサがぺったんこになって閉じられていた。
かなり古いものだった。台紙の裏側には、15年前の夏の日付が書かれていた。



「のんちゃんが初めて俺にくれたプレゼントだよ」




それを聴いた瞬間、あっという間に蘇る記憶があった。


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