ほしとたいようの診察室
第8章 入院生活は続く
『あのね、ゆびわつくったの。のんちゃん、おひめさまだから、よーたせんせーはおうじさま』
陽太先生の左手の薬指に、シロツメクサの指輪をプレゼントしたことが……あったっけ。
あれはたしか、5歳のときの夏。今と同じくらい暑かったあの日のこと。
わたしは、陽太先生に花冠を作ってもらったのだ。一緒に手を繋いで、散歩をした。
あの時はずっとずっと病院の外に出たくて、駄々をこねたこともあった。
「……思い出した。陽太先生が、綺麗な花冠を作ってくれたこと」
栞をまじまじと眺めながら、いつの間にか笑っていた。あれは、すごくうれしかった。
本物の、憧れていたお姫様になれた気がして。
シロツメクサの栞は、茶色くなってもまだ、陽太先生に大切にされていた。
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