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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く



吹田先生はすぐさま聴診したあとに、わたしに新しいパジャマを着せてくれた。

手足や額を念入りに触ると、次々に血圧や酸素濃度、体温を測っていく。


「熱いね。体温計挟むよ」


ひんやりとした、吹田先生の手が、わたしの体中に触れるたびに、なんとか死なずに済みそうだと安心だけが押し寄せた。

吹田先生はナースコールを押して、看護師さんを呼びつける。
すると、処置の準備をした看護師さんがカートを押してやってきた。


吹田先生は看護師さんに礼を言いつつ、何やら準備をし始めた。




「すごくだるいと思うけど、ここで血液検査しちゃうね」




「い……や……ゲホッゲホっ」





激しく咳き込みながら、もう痛い思いは勘弁してほしいと願ったが、聞き入れられることはない。



吹田先生は、わたしの腕にさっさとゴムのバンドを巻くと、左手をぐっと握らせて血管を探し始める。



「寝たままでいいよ、ここで採るから」



なされるがまま、針が刺さり血液が抜かれていく。


「すぐ終わるから」


「いっ……ゲホッゲホ…ウッ」



咳で揺れる体をうまく押さえ込まれて、腕だけが動かない。吹田先生は採血に集中して、本当に一瞬でその苦痛は終わる。



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