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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く



「ちょっと呼吸、楽になると思うから」



背中から聴診器で肺の音を聞きながら、何かを思案しているようだった。
ヘロヘロのわたしは、ただ息をする。



「これから陽太先生呼ぶから、一緒にここにいてもらう」



聴診が終わると、吹田先生はきっぱりとそう告げた。
聴診器を片付けながら、選択肢などはわたしにくれずに。


「え……なんで……」


荒い息をなんとかおさえながら、声を振り絞る。


「正直、いまののんちゃんは目を離していい状態じゃない。だけど、俺も他の患者のところに行かなきゃいけない」


わたしの指先に何やら機械をつける。
きっと、体内の酸素を測るやつである。
90%前半の数字を確認し、カルテに何かを書きつけながら、




「陽太先生、宿直明けでこれからフリーになるだろうから、30分一緒にいてもらう」




揺るがない決定事項を、もう一度告げた。


「そんな、……悪いです……。それに、わたしこんな状態で……また陽太先生に迷惑かけちゃう……」



心配したことを頭の中でまとめる暇もなく声にすると、吹田先生は真面目な顔をして言った。



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