ほしとたいようの診察室
第8章 入院生活は続く
しかしその思いとは裏腹に、下腹部の違和感が確かなものになり、存在感を増していく。
「いっ……た……」
腹痛を庇いながら歩くと、なおさら遠くへは行けない。
結局、病院の近くの公園へと入り、日陰になっていたベンチに座り込む。
公園は、夏の暑さの中でも子どもたちが元気に遊んでいた。
昼休憩を取るサラリーマン、犬の散歩をする人、ランニングする人。
その人たちにとっては、これが現実なんだろうけれど、わたしにとってはこっちの方が夢だった。
普通に生活できるって、案外すごいことなんだと感じる。
遠目にその光景を見ながらベンチに体を預けると、うずくまった。
今日これから、この瞬間からのことを考える。
日陰とはいえ暑さは尋常ではない。蝉の鳴き声が耳元に迫るようだった。
外の暑さに慣れていないから、なおさら辛く感じた。
焼くように熱い日差しの中を歩き、体力を消耗していた。
入院して1週間。
ベッドで眠るしかなかった日々を過ごしていたのもあり、体がバテるのも早い。
想像以上に自分の体が使い物にならず、途方に暮れていた。
逃げ出してしまった手前、今さらどんな顔して病院に戻ればいいのかもわからない。
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