ほしとたいようの診察室
第8章 入院生活は続く
「じゃあ、背中貸すから」
陽太先生はわたしをベンチから起き上がらせると、
「掴まって」
と背中を向ける。
恐々と陽太先生の肩に手をかけて、体重を預けると、軽々と体を持ち上げられる。
陽太先生のいつもの柔軟剤の香りがして、それだけで泣いてしまいそうだった。
病院への道を歩き出す。
なんて、安心する背中なんだろう……自分の全体重を陽太先生に委ねた。委ねてもびくともしないその背中が、頼もしかった。
「ようたせんせ……」
「なに?」
少しだけ冷たいような声だったのは、陽太先生が怒っているから。
掠れた声で、これだけは伝えないと、と言葉を手繰り寄せる。
「わ…たし……ごめんなさ……い」
「ん。どんだけ心配したと思ってんの。あとでたっぷりお説教だよ。覚悟しときな」
それ以上は言葉を交わさなかった。
陽太先生はわたしを見つけたことや状態を手短に病院に連絡しながら、帰路を急いでいた。
……
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