テキストサイズ

ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く




「あー……少し溜まってるかなぁ」


丁寧に手を動かしながら、大海先生は言った。

大海先生が冷静なのは、わたしのお腹の状況が最悪を免れているからだった。


……もう少し陽太先生が見つけるのが遅かったら、喘息も腹痛もどうなっていたかわからない。


「処置は必要かなぁ。ちょっと排出手伝ったほうがいいですね。……吹田先生、サポートお願いしてもいいですか?」


「うん。了解。」


お腹についたジェルを温かいタオルで拭き取りながら、大海先生が絶望的な言葉を口にする。

その言葉の意味することが、わからないはずなかった。



「やだ……」



解放された両手で目元を覆う。
涙が出て、しかたなかった。


「のんちゃん。ちょっとだけ頑張ろうか」


大海先生は次の準備を始めようとしていた。



やらないという選択肢はないらしい。




「いや……なんで……」


「いま頑張らないと、後がつらいよ? この前の機械は使わなくていいと思うから。頑張ろう? それと、処置しちゃえば腹痛はなくなる」


と、大海先生から言い聞かされる。

……機械はなし。この腹痛からは解放される。






それにしても、もう頑張れる気がしない。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ