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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く




「のんちゃん。熱測ろうか」



陽太先生は布団をそっと退けると、わたしの脇に体温計を挟み込んだ。


「ようたせんせ……」


「ん?」


「わたし……」





話しかけた言葉を遮るように、体温計の電子音が鳴り響く。





「37度8分。……どうした?」



続きを、陽太先生が促す。
何が言いたかったのか、何が聞きたかったのか。全然わからなくて、黙り込んだ。



外に出たこと、外で腹痛と発作で死にそうになったこと。治療を受けたけど、陽太先生がついててくれたこと。
夏の鮮やかな色とともに、今日のことを思い出していたのに、なんだか昔のことのようにぼんやりとしていた。




でもあの時、陽太先生が見つけてくれなかったら。

多分もっと大変なことになっていたから、これだけは伝えないといけない。





「陽太先生……ありがとう……」



「ん。どういたしまして。」











しかし治療と言えど、とんでもなく恥ずかしい思いをしたことが蘇ってきた。

布団に潜り込み、陽太先生に背を向ける。





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