ほしとたいようの診察室
第9章 ひとときの外出
足を崩すとテーブルの下、膝に何かが当たった。
ガサッと紙が擦れる音がして、視線を下にすると……。
「あ」
短い悲鳴にならない声をあげる。
入院の元凶になったものが、足元に転がっていた。
……溜めに溜め込んだ、婦人科の薬である。
開封して何錠かしか口にしていない紙袋と、全く手をつけていない紙袋が、ビニール袋いっぱいに入っている。
よりにもよって、陽太先生の前でそれを見つけてしまった。
「ん? おや……」
わたしが袋に手をかける前に、陽太先生がそれに気づいて拾いあげる。
しげしげと袋の中身を確認した後に、苦笑いを浮かべた。
「……よくもまあ、こんなに溜めたねぇ。本当だったわけか、3日分しか飲んでなかったのは」
噂は陽太先生も耳にしていたようである。
焦りながらも、白桃烏龍を口に含んで飲み下す。
「まぁ……その……」
言葉に詰まっていると、陽太先生は袋の口を縛って、自分のバックの横に置いた。
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える