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ほしとたいようの診察室

第4章 心と身体




「本当は、身体もだけど、心の方もつらくなってきてるんじゃないの?」



陽太先生は、わたしの胸の真ん中を指差した。


ずっと心の中に渦巻いていた気持ちを指摘されたみたいだった。陽太先生は、そこに目が向いている。その声を聴こうとしている。わたしの心の声を。

苦しい。
本当は苦しいのだ。
好きな仕事に就いたはずなのに。
みんなに迷惑かけて、小夜ちゃんとも差がついて、こんな身体じゃなかったらって、苦しい、悔しい。



ぼろぼろと、涙が勝手にこぼれる。



「ね、本当は自分の心と身体なのに、言うこときかなくて、困ってるんでしょ」


頷く。ようやく本当のことを意思表示できた。

陽太先生は、立ち尽くして涙をこぼすことしかできないわたしに、ポケットからハンカチを差し出した。



「頑張ってるなぁってずっと思ってたよ、みんな心配してた。先生達もさ」


手渡されたハンカチで、目元を抑える。
いつも白衣から香る柔軟剤と同じ匂いがして、なんだか懐かしい気持ちになった。昔から変わらない匂いだったから。

陽太先生に優しく頭を撫でられて、優しい言葉をかけられて、乾いた心が潤っていく。




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