
ほしとたいようの診察室
第4章 心と身体
それから、吹田先生が言ってたことを思い出して、俯いた。
「あ、あの、……当直明けなのに、ごめんなさい」
「んー? なにが?」
思い当たることがなにもない、と言ったように、陽太先生は返事をした。
「吹田先生から聞いて、待ち伏せしてたと……」
わたしがぼそっと呟くと、
「あぁ! あれね。ほんと、吹田先生は抜かりないよね」
と、陽太先生は笑った。
「抜かりないっていうか、わたし、信用ないっていうか……」
少しむくれると、陽太先生はわたしの頭をぽんっと1つ撫でた。
「それくらい、のんちゃんに良くなってもらいたいんだよ」
そう言われて、はっとする。
自分のことで精一杯で、人の気持ちなんて考えられなかった、と。
みんな、わたしの身体を心配してくれていた。
「当然だよ、医者だもん。ましてや小さい頃から見てた子なんだから」
病院から出ると、月明かりがわたし達を照らす。
ぽっかりと大きな月が、暗い空に穴を開けているようだった。
……今頃、大海先生は忙しくしているんだろうか。
足元には、月影ができていた。
