
ほしとたいようの診察室
第4章 心と身体
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「はぁー、もー、のんちゃんどこ行った?」
小児科の午前の外来を終えると、蒼音くんから緊急の連絡が入った。
のんちゃんが病室から逃げ出したらしい。
急いでナースステーションに顔を出すと、小児科病棟の看護師たちが困り果てていた。
「小児科病棟、隅々まで探したんですが……どこにもいなくて。同室の子に遊んでくるって言ったっきり、どこか行ってしまったようで……」
あれはたしか、のんちゃんが5歳の時の夏。
入院していたのんちゃんが、脱走を図ったことがあった。
「まだ遠くには行ってないとは思いますが、万が一外に出てたりなんかしたら……」
看護師の1人が青ざめる。
外に行ってなくても、院内はそれなりに広い。
とんでもないかくれんぼに巻き込まれたと、その場の全員が思っていた。
「とりあえず、手分けして探そう。警備員さんに連絡して、出入口は見張ってもらって。……蒼音くんは?」
話しながら、連絡をくれた蒼音くんがいないことに気づく。
「もう一度、見落としてないか探しに出てます」
「わかった。とりあえず、俺も一緒に探すね」
