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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 208 前向きに…

「なんかね、前向きにいこうかなってさぁ」
 今度は少し高揚気味な感じになり、そう話してくる。

「前向き…か」

「うん、そう、前向きにね」
 そう応えてくるきよっぺの大きな瞳には、私の姿が映っているように感じられたのだ。

 そう、アナタが居れば…

 アナタが居てくれるなら…

 そしてその大きな瞳が、そう私に語り掛けてきている様にも感じられていた。

「ま、前向きに…か」

「うん、そうよ、前向きに、明るく生きないとさぁ」
 私は、そう言ってくるきよっぺを見て、ある意味複雑な思いが湧いてきていたのである。

 やはり、きよっぺの中で存在感がかなり大きくなっているっていうことか…

「さあ、座ってよ」
「あ、うん…」
 そして勧められるままに座った。

「どう、まあまあの座り心地でしょう?」
 と、にこやかに訊いてきた。
 そして私は頷く。

「これでもさぁ、意外に高かったのよ」
「そうか…」
「あ、とりあえずビール飲むでしょう」
 そう明るく言いながら缶ビールとチーズ系の簡単なつまみを冷蔵庫から持ってきた。
 そしてそんなきよっぺの姿を、この新しく買ってきたローソファーに座りながら眺めて見ると、薄いオレンジ系の花柄のワンピースを着ていた、そして室内にも関わらずに薄い光沢のストッキングを穿いている。

 これはストッキング好きの私を意識してのことであろう…
 そんな彼女を見てそう思う。

 やはり、これからのアキレス腱になりそうだな…
 心がそんな騒めきと、そしてそのストッキングの光沢による昂ぶりをも感じてきたのだ。

 さっき、ノンを抱いてきたばかりなのに…
 そんな自分の昂ぶりに呆れてしまう。
「もお、ボーッとしてぇ」
 そう呟きながら缶ビールを開けて手渡してくる。

「あ、いや…」
「そんなに飲んできてないんでしょう?」
 私はそんな事をグダグダと考えていたからおそらく複雑な顔をしていたのであろう、きよっぺがそう訊いてきたのだ。

「え、あ、うん」
 ヤバかった…
 一瞬、旧友達と飲んできたというウソを付いていた事を忘れそうになってしまったのである。

「あら、疲れてるの?」

 そんな不惑な思いをしているから、どんどんときよっぺに突っ込まれてしまうのだ…






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