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　226　優柔不断な想い

　今はまだ小さな渦ではあるのだが、その内に少しずつ大きな渦となって、飲み込まれてしまうかもしれない…
　なんとなく、そんな感じがしていた。

　今感じているドキドキとした騒めきが、そう訴え掛けてくる…

　だが、このドキドキは私自身の、この目の前に居るきよっぺに対しての昂ぶっている愛情の想いともいえるのである。

　そしてこの自覚している愛情が、彼女の事を粗末に、ぞんざいに扱わさせないという想いの壁となり、この先への警告にも感じられてくるのだ。

　しかし、それは単なる思い過ごしかもしれないし、現時点では分からないし、分かり様もない…

　ただ、はっきりとしている思いは、こうして目の前に本人が居ると私の中で再燃した愛、愛情に溺れ、抗えなくなってしまう…
　と、いう私の、そんな優柔不断さといえるのである。
　
　きよっぺの大きな瞳を見ると…

　そして見つめられてしまうと…
　そんな優柔不断になってしまうのだ。

　そしてその想いにはそんなヒリヒリとした自覚もあるのだが、心の何処かで、いや、奥深くで
　どうせ、こっちに、この田舎に帰ってきた時だけの関係なんだ…

　今更ってきよっぺ自身も言っていたし…
　と、そんな調子のよい、そして自分の都合によい思いもあったのである。

　だから、今だけ…

　こうして一緒に居る時だけ…

　そして実家に帰ってきた時だけ愉しめればいいんだ…

　それに現実的な事を鑑みれば、きよっぺ自身だってそう思っているはずであり、それは聡明な彼女が一番良く分かっているはずなのだ…


「ねぇ…
　だから、キスして…」
　きよっぺはそう囁きながら、唇を寄せてきた。

　そして私は、その唇を受ける。

『ねぇ…』

『だから…』

　きよっぺは、今、確かにそう囁いてきた。

『だから…』

　それは、今だけ…

　こうして一緒にいる時だけ…

　そう、私の心には聞こえてきたのである。

　そしてそんな優柔不断な私は…

『なるようになれ…』

　と、愛の甘さに酔いしれ、溺れ、そう思ってしまうのだ。