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シャイニーストッキング

第2章 絡まるストッキング1

 109 佐々木ゆかり ①

「あーっ、何してんですかぁ」

 遅れてもう一人の6人目のメンバーである上野涼子が到着して大原本部長とわたしに挨拶をし、越前屋朋美により、蒼井美冴と武石健太に紹介をしてから改めて乾杯をした。
 正にそんな宴たけなわの時に突然、越前屋さんがそう言ったのだ。
 そしてその彼女の声に大原本部長とわたしの二人は思わずそっちに視線を向けた。
 それはいい感じに酔った越前屋さんが再び蒼井さんと健太のいる席側に移動したタイミングであったのだ。


「ああー、いいなぁ、わたしもマッサージしてもらいたいなぁ…」

 マッサージって…

 どうやら健太が蒼井さんの足裏をマッサージしていたようなのである。

 足裏のマッサージを…

 実はこの酒宴が始まってから、たまたまテーブルを挟んだ向かい側の対面の席に蒼井さんが座っているので、どうしても気になってしまっていたのだ。
 だが、だからといって蒼井さんをマメに見る、観察する訳にもいかず、敢えて、視線を大原本部長か隣の越前屋さんに向ける様にはしていたのだが、やはり、どうしても気になってしまっていた。
 また、どうやら自称『お姉さんキラー』の健太が蒼井さんを気に入ったらしく、控えめなのだが、徐々に蒼井さんに対してアプローチを仕掛けているのが見受けられていて心の中の目が離せないでいたのだ。
 そんなタイミングでの越前屋さんの声だったので思わず視線を向けてしまった。

「ねぇ、武石さぁん、わたしにもぉマッサージしてくださいよぉ…」
 と、無邪気に越前屋さんは健太に話している。
 本部長も云っていたのだが、本当に越前屋さんには癒される感じがするのだ、あの愛嬌たっぷりの笑顔には心が和む感じがしてくる。
 
 ホント、明るい子だわ……んっ…
 そう思いながらその越前屋、健太、蒼井さん三人の様子を何気なく眺めていたのだが、ふと、何となく違和感を感じたのだ。

 んっ、なんだ…
 蒼井さんと健太の様子が少しだけ変なのである。
 健太は直の後輩であり、ブランクはあるが色々な意味でも気心が知れている。
 そして蒼井さんは『黒い女』時代から、やはり色々な意味で意識をしていたせいもあり、この二人の微妙な様子、雰囲気、感じの違和感はわたしにしか判らないレベルなのだとは思うのだが、なんとなく違和感を感じてくるのだ。




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