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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 37 大原本部長との電話(4)

『そう、事後報告になってしまうんですが、実は今夜、急遽、越前屋に頼まれて面談をしたんです…』
 そう言った。

「ほう、面談か…」

『はい、そうなんです…』

 そして、その伊藤敦子さんの優秀さと、保険会社退職の理由、そしてリスト漏れの理由等を簡単に伝える…

「なるほど、それはゆかりの一存に任せるよ」
 彼はすぐにそう応えてきた。

 以前、彼はわたしに
 これからどんどん色々と忙しくなってくるのでプラスになる事は事後報告で良いから、だから全てゆかりの判断に任せるから…
 そう言ってきたのだが、正にその通りの答えが返ってきたのである。

『はい、分かりました』
 
「うん、それらの事は全てゆかりを信じるし、キミの一存に任せるからよろしく頼むよ…」
 本当に今夜だけは、それどころでは無いみたいな感じに言ってきたのだ。

 そして…
「ふうぅ…」
 と、ため息をひとつ漏らしてくる。

 なんとなく、彼は騒ついているようだ…
 そう感じてきていた。



『ホント、大変そうですね…
 本当は今夜から逢いたかったけれども内容が内容ですし、あまりにも本部長が大変そうなんで許してあげますね…』
 そしてわたしはそう言った。
 これは本当の本心からの気持ちである。

「ああ、ありがとう、済まないな」

『でも…
 男の世界、いえ、サラリーマン世界は大変ですねぇ…』
 これも本心である。
 女の世界も違った意味では色々と大変な面はあるのだが、こんな男の世界の、そしてサラリーマン世界の派閥争いは熾烈であり、女の争いの比では無い事も理解しているつもりであった。

「ああ、うむ…」

『出世は実績よりも処世術の方が大切なのだ…』
 と、そして今回の彼の出世の流れを鑑みてもそう思う。
 

『10日の夜には逢える、いや、逢って下さるのかしら…』

 二泊三日だから、10日には帰ってくる筈なのである…
 今はもう8日の夜なのだがら、実質的にはあと一日半待てば良いだけなのだ。


「ああ、もちろんさ、10日の夜には帰宅する筈だから、帰ったら飛んで行くよ…」

『飛んで…、嬉しいわ、是非とも飛んで来て下さいませ…』

 ああ…

 彼のその『飛んで…』という言葉に心が震え、そして濡れてしまう。





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