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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 47 黒歴史の…

「うん、仕事でちょっとね…」
 わたしはそう言いながら、目で杉山くんに口止めを訴える。

「あ…」
 そんなわたしの視線に気付いた杉山くんは慌てて口ごもった。

「そうかぁ、仕事かぁ…
 あの『ゆかり姫』がねぇ…」
 彼の目がキラリと光った感じがした。

 ああ、ヤバい…

 お願いだからその『ゆかり姫』と呼ぶのを止めて…

 わたしはすっかりドキドキし、そして狼狽えてしまう。

「おおい、蓮太郎くん、そろそろ…」 
 すると彼は呼ばれた。

「あ、はい…」
 そう返事をし…

「じゃあ『ゆかり姫』またね…
 あ、そうだ今度また遊ぼうよぉ…」
 そう言って向こうの席へと戻っていったのである。

 ああ、ヤバい…

 まさか…

 まさか、こんなところで、黒歴史の生き証人と再会してしまうとは…

 わたしはすっかりドキドキと高ぶり、ザワザワと騒ついてしまっていた。

「…………」
 
 そして目の前の杉山くんは、まだポカンとしていた。
 何が起きたのか状況を把握できていない顔をしている。

 
 三山蓮太郎…

 わたしの過去の黒歴史の生き証人…

 今から約7年前…

 わたしが大学三年生の時期…

 渋谷、赤坂、六本木界隈のディスコで
『姫』と崇められ、煽てられ、舞い上がって、そしてドラッグに狂っていた時期の遊び仲間の一人であった…

 俳優『三山蓮太郎』32歳…
 つい最近『助演男優賞』を受賞したばかりの有名俳優であり、またある意味遊び人としても有名な俳優でもある。

 本名は『三山蓮』
 母親は有名な大女優であり、あの昔の当時、彼はその母親の七光りを利用してお坊ちゃま然として遊びまくっていて、当時、わたしが入り浸っていた
『六本木クラブJ』の超スーパーVIPメンバーの一人であった。

 そしてわたしは当時『クラブJ』で女王様然として狂っていて、当然のように彼とも遊んでいたのだ…

 ついこの前、その『クラブJ』の元黒服だったと名乗り出てきた我がコールセンター部に入っている外資系人材派遣会社の営業課長である
「遠藤タカシ」とは危険度、重要度がまるで『三山蓮太郎』の比ではないのである。





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