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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 214 キス…

「あ、いや、お、俺も…」
 すると鈴木くんもそう呟いてくる。

「ああっ、もお、創くんはダメだからねぇ」
 そう小さく叫びながら鈴木くんの腕を掴む。
 本当に彼女は明るくて愉快である。
 そしてその仕草に、まだ付き合い始めたばかりの初々しさも感じてきたのだった。

「ほらぁ、もお、杉山くんはいつまで佐々木部長に見とれてるのよぉ」

「あっ、う、い、いや…」
 そして杉山くんは彼女のそんなツッコミの言葉に慌ててしまう。

 だが…

 多分、杉山くんの脳裏には…

 昨夜の帰り際にわたしがサッとした、軽いキスを想い浮かべていたに違いない…

 そして、そのキスは本当に軽いキスであったのだが…

 杉山くんにとっては…

 限りなく重いキスであったのだろう…

 いや、想いキスであったに違いない…

 そしてわたしは、再びそんな杉山くんに対して、また、かわいい…
 と、想ってしまったのだ。

 さっき、あんな反撃を食らったのに…

 そしてトイレから戻ってきたわたしにはもう何も仕掛け様とはしてこない、いや、さっきまでよりも二人の間が離れて座っているのに、全く詰めて来ようともしないその様子に…

 逆にわたしは、それがまた…
 かわいいと思えてしまっていた、いや、思ってきていたのである…

 さっきのあの一瞬でも『オス』の危険な匂いを感じたのにも関わらず…なのである。

 それは…

 杉山くんだからという安心感からの油断なのか…

 大原本部長とのキャンセルの寂しさの反動なのからなのか…

 それとも昼間電話が掛かってきた、黒歴史の『三山蓮太郎』からの不惑の想いのせいなのか…

 理由はどうあれ、そんな杉山くんをやっぱりかわいい…
 と、思っているわたしがいるのであった。

 そして…

 それが…

 わたしの心の中の小さな綻びとも気付かないで…

 わたしは再び、杉山くんの右足に自らの左脚を絡めていったのであった…


「ぇ…ぁ……」
 杉山くんはそんなわたしの動きに、小さくビクッと反応をしてきた。

「うーんとね、次は赤ワインでものんじゃおっかなぁ…」

 そしてそんな悪戯にまた再び、小さくドキドキと昂ぶらせながら、わたしはそう呟いた…

 少しだけ、昂ぶりが押さえ切れなくなっていた…

 少しだけ…








 
 
 

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