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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 138 言葉の重さ…

 そして、母親からのその
『待ってるからね…』
 という、言葉の意味の重さを改めて考えてしまう。

 昨年までのお盆は…

『黒い女』状態であったから、もちろんお墓参りなんて行かなかったし、行けなかった。

 だから…

『黒い女』から復活をし、お盆休み目前の8月6日に母親から
『今年はお墓参りに行けるの?』
 と、訊かれた時には即答をしたのだ。

 そして、そのわたしの返事に嬉しそうな笑顔を浮かべてきた母親の顔を見て…

 ああ、本当に今まで大変な気苦労と心配を掛けてしまったんだなぁ…
 そう、本当に、心からそう思ったのである。

 だが、今度は…

 『黒い女』から正常に復活した途端にこうして居場所も告げずに連続して外泊を続け、それをまたついこの前、姉にも嫌味を云われる位に再び心配を掛けてしまい、そんな意味での…
『待ってるからね…』
 であり、それらの言葉の意味の重さを感じ、考えてしまう…
 と、いうことなのである。

 ああ、またやってしまった…

 わたしはタクシーの後部座席に座り、走り過ぎて行く外の風景を眺めながらそう自虐をしてしまうのだ。

 そして昨夜の異常ともいえるアブノーマル的で、同性愛的な衝動の、余りにも激しい興奮と昂ぶりにより…
 すっかり前後の現実的な流れや時間を忘れてしまい、いや、現実逃避をしたのかもしれない。

 昨夜は、それくらい夢の様な一夜を、興奮と昂ぶりを、そして蕩けてしまうような快感の時間を過ごしたといえたのだ…

 本当にそれは夢の様な快感であった…

 だから…

 終わりにはしたくない…

 絶対に昨夜だけの、一夜限りの夢では終わらせたくはなかったのだ…



『また今夜…来てもいい?…』

 そして…

 それがさっきの別れ際の…

 この言葉に通じるのだ…


『また今夜……』

 またゆかりさんに逢いたい…

 すぐにでも逢いたい…

 現実の時間と流れに潰されてしまう前に…

 逢いたいのだ…




「あ、運転手さん、駒沢大学脇から首都高の下を行って……」
 間もなく自宅に到着する。

 だけど…

 その前に、とりあえずはお墓参りだ…

 そして…

 久しぶりのお墓参りを済ませ、さんざん心配を掛けた母親と姉を安心させるんだ…

 ゆかりさんとはまた…


 その後だ…





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