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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 159 自然の昂ぶり…

「あのね、調べたら映画は5時からなの」
 そんな束の間に、ジリジリとしていたら、ゆかりさんがそう言ってきたのだ。

「そうなんだぁ、ま、いいじゃない…
 じゃあ、せっかく渋谷にいるんだからぁ、お買い物しましょうよぉ…」
 そう、まだ時間はたっぷりあるし、本当の本音は…
 一緒にいられるならば映画なんてどうでもよかったのである。

「うん、はい、ぜひっ」
 そう明るく返事をしてきた。

「うーん、じゃあ、何処に行きますかぁ…」
 この渋谷は、いつも通勤で乗り換えるターミナル駅ではあるのだが、ほぼ、寄り道した事は無かった、いや、皆無である。

 わたしにとってのこの街の存在意義は…
 若者の街…
 学生の街…
 そんなイメージなのだ。

 それくらい渋谷自体が無縁といえた…

 でも、せっかく久しぶりにこうして二人で訪れたのである…
 まずはショッピングを楽しまなくては…
 そして愉しむのだ。

 それに映画も話題の『失楽…』であるのだ…
 これも楽しむのだ。
 

「ねぇ、せっかくだからぁ109覗いちゃう?」
 そして、そう声を掛ける。

「あ、え…」
 すると一瞬、何かを考えていたかの様にハッとした感じに呟いてきた。

「さすがにぃ、109は、若過ぎちゃうかなぁ」
 続けてそう話していく。

 わたしはなぜかテンションが、いつもよりやや高くなっている様な気がしてきていた。

 え、あ、これはヤバいのか?…
 そう、一瞬だが、最近のあの自律神経の昂ぶりなのかと、ドキドキしてきてしまう。

「あ、うん、いえ、そんな事ないでしょう、109に入りましょうか…
 それに暑いし…」
 しかし、ゆかりさんもややテンション高めでそう言ってきた。

 そうだ…

 そうなんだ…

 今は、こうして大好きな、愛しいゆかりさんと一緒にいるんだから…
 テンションが上がるのが自然なんだ。

 決して自律神経の昂ぶりではない…

「なんかぁ、わたしも久しぶりにテンションが上がっちゃってる気がするわぁ」
 わたしは、自分に言い聞かせる意味でも、そう言葉に出したのである。


 だってわたしは…

 だって…

 だって…

『ゆかりさんに早く逢いたいの…』
 と、自分から電話をしたのだから。

 テンションが上がるのが自然なんだ…




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