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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 160 本当の…

「ねぇ、せっかくだからぁ109覗いちゃう?」
 美冴さんがそう声を掛けてきた。

「あ、え…」

「さすがにぃ、109は、若過ぎちゃうかなぁ」
 なんとなく、そう言ってくる美冴さんのテンションが、いつもよりやや高い様な気がする。

「あ、うん、いえ、そんな事ないでしょう、109に入りましょうか…
 それに暑いし…」
 そしてわたしは慌ててそう言い繕った感じで返事をする。

 そうなんだ、そんな昔のことなんて今更、ううん、今、こうして大好きな美冴さんと一緒にいるんだから関係ないんだ…
 だって…
 今、わたしには、こうして美冴さんというお友達が出来たのだから、いや、一緒にいるんだから…

「なんかぁ、わたしも久しぶりにテンションが上がっちゃってる気がするわぁ」
 そんな美冴さんの言葉が嬉しい。

「じゃあ、中へはいりますかぁ」
 と、美冴さんはわたしの肩に手を掛けて、やや押し気味にそう言い…
 そしてわたし達は中に入る。

「うわぁ、109に入るなんてぇ、チョー久しぶりだわぁ…
 大学生時代以来かもぉ…
 通勤はいつも通ってるんだけどね」
 更に美冴さんは話してくる。

 本当にテンションが高めみたい…

 わたしと一緒にいて、テンションが高い…
 それは嬉しい事でもある。

「逆に、大学生時代はよく彼氏と渋谷でデートしたなぁ…
 だから、ゆかりさんからのお誘いでつい昔を思い出しちゃったのよねぇ…」
 にこやかに言ってくる。

「ねぇ、ゆかりさんは渋谷はいつ以来なの?
 やっぱり大学生時代以来かしら?」
 と、矢継ぎ早に訊いてくる。
 本当にこんなに話しをする美冴さんは初めて見た。

 わたしの印象は、いつも物静かで、無口な感じに捉えていたのだが…
  実は、案外、これが本当の美冴さんの姿なのかもしれない。


「え、あ…、うん、わたしも大学生時代以来かも…
 うん、そう…」
 そう応えた瞬間に…
 脳裏には、あの大学生時代イコール『黒歴史』が浮かんできてしまったのである。

 渋谷イコール大学1年後半から2年の時代…
 その時期からわたしは『姫』と呼ばれる様になったのだ。




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