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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 161 再びの『黒歴史』

「え、あ…、うん、わたしも大学生時代以来かも…
 うん、そう…」
 そう応えた瞬間に…
 脳裏には、あの大学生時代イコール『黒歴史』が浮かんできてしまったのである。

 渋谷イコール大学1年後半から2年の時代…
 その時期からわたしは『姫』と呼ばれる様になったのだ。

 そして『轟勇斗(とどろきはやと)』通称ロッキーという当時のわたしのツレ…
 その存在までが一瞬にして浮かんできたのであった。

「ゆかりさんの大学生時代かぁ…
 見てみたかったわぁ…
 相当、モテてたでしょう、ううん、凄かったって…」

「えっ…」
 その美冴さんの言葉に一瞬、ドキッとしてしまう。

「凄かったって、そう健太くんが言っていたわ」

「あ、け、健太…が」
 健太の名前が出て、更にドキッとしてしまう。

「でもね、わたしがゆかりさんの大学生時代の話しを教えてって訊いてもね、なかなか教えてくれないのよねぇ」

 そうか、よし、約束は守っているんだな…

「ええ、そ、そうなんですかぁ…
 ま、サークルで一緒だっただけって感じでしたからねぇ」
 と、咄嗟に誤魔化したのだ、いや、誤魔化しにはならないかもしれないが、そう言うしかなかった。

 さすがに、まだ、あの『黒歴史』の事はいくら美冴さんといえども言えはしない…

 いや、話してしまったならば、間違いなく引かれ、ううん、きっと嫌われてしまうに違いない…

 だから、絶対に、話したくはない。

 せっかくの…
 よい関係なになれたのだから…

「そ、そんなぁ、わたしなんてぇ…
 た、大したことなかったですよぉ…」
 多分、そう言っているわたしはキョドっているに違いない。

「あ、あそこ、あ、あのお店見たいです」
 そして咄嗟に、目に入ったショップを指差してそう言った。

「あ、うん…そうね
 そうそう、こんなサンダル欲しいって言っていたものねぇ」
 すると美冴さんは、その目の前のショップと、自分の脚元を見てそう言ってくる。

 そう…
 偶然にも指差ししたショップは、靴屋であった。

「あ…、は、はい、わたしも美冴さんみたいなサンダル欲しくってぇ」

「うん、じゃあ、見てみようかぁ」

 なんとか危機から逃れられた…
 
 ドキドキドキドキ…

 だが…

 まだ、慌ててしまった高ぶりが続いていたのである。



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