テキストサイズ

シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 162 天使と女神…

 やっぱり渋谷はマズかったか…

 新宿から始まって、渋谷、横浜、六本木…
 この4カ所は正に『黒歴史』の代名詞に通じてしまうから。

 これからは、気を付けなくてはならないかもしれない…

 あ、でも、横浜はそこまでではないから大丈夫かも…
 だって美冴さんと一緒に横浜にも遊びに行きたいし…

 ううん、そんな平気、大丈夫よ…

 わたしさえ、黙っていればいいんだから…

 気にしなければいいんだから…

 そして健太も、意外に口が堅いみたいだし…

 そうよ、ちゃんと『黒歴史』を乗り越えなくちゃダメなんだから、大丈夫、頑張る…


「ゆかりさん、これいいんじゃない?」
 そんな事を逡巡していたら、美冴さんがサンダルを手に取りながらそう言ってきた。

「あ、は、うん、あ…」
 そしてわたしは我に還る。

「ほら、いい感じよ」

「あ、本当だ…」
 そう言う美冴さんの微笑みを見て心がホッとしてきた。

 そう、その微笑みは、まさに天使の如くであったのだ…

 ドキドキしていた高ぶりと『黒歴史』という不惑な想いがその微笑みを見た瞬間に、氷解したかの様に消えたのである。

「どう、いいんじゃなぁい?」

「あ、うん、え、でも…」

「え、でもってぇ?」

「これじゃあ、美冴さんとほぼ同じデザインになっちゃうから…」
 
 すると…
「いいの、同じデザインで」
「えっ」
「だって、ゆかりさんとお揃いにしたいから」
 と、夢の様な言葉を言ってくれたのである。

「あぁ…」

 そんなぁ…
 思わず心が震えてしまった。

 まさか…

 そんな…

 夢の様な言葉を言ってくれるなんて…

 嬉しくて堪らない。

「いいじゃない、お揃い…」

「う、うん…」

 この美冴さんなら…

 いや、この美冴さんになら…

 例え『黒歴史』の事がバレてしまっても…

 ううん、自ら話しをしたとしても…

『そんなのぉ、昔の事じゃないのぉ…』
 と、一笑に付してくれるかもしれない…

 いや、軽く笑い流してくれる筈だ…

 わたしにはこの目の前の美冴さんの姿が、天使から…
 女神に見えてきた。

 あぁ…

 美冴さん、大好きだわ…
 
 
「ほらぁ、だってお友達なんだもん、お揃いが…いいんじゃない」

 涙が出そう…

「あ、う、うん、はい…」




ストーリーメニュー

TOPTOPへ