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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 164 ホテルのレストランへ

 たが…
 そう呟いてきた美冴さんは、指先を絡めてきたことなんて知らん顔であった。

 だから…
「もう、途中で指先を絡めてくるんですもん、わたし変にドキドキしちゃいましたよぉ」
 と言ったのだが…
「えっ、あ、あれって…わ、わたしからだったんだっけ…」
 と、惚けてきたのである。

「えっ、うん、美冴さんからですよぉ」
「あ、そ、そう…だったの…
 ごめんなさい、なんか興奮しちゃって…」
 どうやら無意識であったようなのだ。

「あら、やだわぁ」
 そして恥ずかしそうに俯いた。

「そうだ、お腹空きません?
 わたしペコペコなんですけどぉ」
 そして話しを変える意味で、そう言ってみる。

「うん、わたしもお腹空いたわ、食べに行きましょうよ」
 すると、美冴さんもにこやかな笑顔に戻たのだ。

「うーん、何がいいかなぁ…」
 そしてそう呟きながら、上を向いて考えていく。

「そうですねぇ…」

 あっ…
 その時に、フッと思いついた。

「あ、そう…
 鴨とクレソンのお鍋が食べたい…」

 そしてわたしと美冴さんの二人は、そう同時にハモったのである。

「あら、やだわぁ…」

「あぁ、本当に…」
 二人同時にハモり、照れてしまう。

 鴨とクレソンのお鍋…
 それは映画の中で二人が二度食したお鍋である。
 
 そしてそれは、心中前の最後の晩餐でもあった…

「もうゆかりさん、それは無理、ムリよぉ…
 だってぇ真夏よ、お鍋なんて何処もやってないわよぉ」

 確かにそうなのだ…
 さすがに真夏では何処もやってないし、確かに映画では美味しそうではあったが、現実的にはお鍋なんて感じではなかったのである。

 ただ、映画のシーンで、あまりにも印象的であったから、つい…

「あ、そう、ワイン飲みたいかもぉ…」
 すると美冴さんはそう言ってくる。

 確かに映画ではワインを飲むシーンも多々あった…

「じゃあ、隣の『東急エクセルホテル』のフレンチレストランに行きましょうよ」
 わたしはそう提案した。

「あ、うん、そうね…
 せっかくのゆかりさんとのデートだしね」

「え…」
 再び、そんな美冴さんの女神の如くのその言葉に心を震わせてしまう。

「じゃあ、そうしましょう」

 そしてわたし達はホテルのフレンチレストランに行く…




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