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シャイニーストッキング

第10章 絡まるストッキング9      美冴とゆかり

 165 素敵に蕩ける

 そのフレンチレストランは25階の高層階のフロアにあり、渋谷の、いや、都内の煌びやかな夜景が一望できる素敵なレストランであった。

「うわぁ、素敵な夜景ね…」
「ホント、素敵ですね…」
「ゆかりさんのマンションの夜景も素敵だけど、ここのは都会の煌びやかなイルミネーションがいいわねぇ」
「そうですね…
 都庁も東京タワーも、都内の高層ビル群も見えてなんか素敵…」
「でも、わたしは海が見える分、ゆかりさんのマンションからの夜景の方が好きかなぁ」
 すると、そう言ってきた。

「そ、そうですかぁ…」
「あんな絶景が毎日見えるから、ゆかりさんは贅沢になっちゃったのよ…」

「そ、そう…かもですね…」
 確かにあの風景は、今や、わたしにとっては日常の景色の一部でしかない。
 そして離婚の慰謝料代わりに貰った訳で決して自分で買った訳では無いからどことなく現実感がなく、そして最近では一人住まいには広過ぎて持て余し気味でもあった…
 だから余計に絶景といえるあのベイエリアの景色を楽しむ事さえ忘れているのかもしれない。

「じゃあ、カンパーイ」
 お薦めの赤ワインで乾杯をする。

「ふうぅ、美味しわぁ…」
 映画では『シャトー…』という高級ワインを何度となく飲むシーンがあったのだが…
 実はわたしは、いや美冴さんも、そんな熟成された高級ワインより、ライトでフルーティーなカリフォルニアワインが好きであったのだ。

「実は、軽くてフルーティーなのが好きで…」
 と、おそるおそる言うと…
「え、わたしもそうなの…
 実はカリフォルニアワインが好きでぇ…」
 と、言ってきた。

「酸味も渋みも控え目でライトなカリフォルニアワインございますよ」
 この会話を聞いていたソムリエがすかさず薦めてくれたのである。

「こんなんで十分よねぇ」
 そして一口飲んだ美冴さんが微笑みながらそう言ってきた。

「はい…」
 そんな女神の如くの美冴さんの微笑みの笑顔にドキドキしながら頷く。

「前菜でございます」
 そしてコースが運ばれてくる。

 素敵なお買い物…

 素敵な映画…

 そして素敵な夜景のホテルのレストランでのディナー…

 そしてこの女神の如くの美冴さん…

 最高のデートである。

 穏やかな高級レストランの雰囲気に、心が蕩けてしまいそうであった…





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