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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 35 アナタの為にも…

「はい、松下律子です」

「そう、松下さん持ってるんですかぁ」
 と、越前屋さんは驚きの声を上げてきた。

「以前、ビジネスコンサルタント会社に在籍していた事がありまして、その当時に少しばかりビジネス資格を幾つか取得いたしまして…」
 タネ明かしを少しだけする。

「え、ビジネスコンサルタント会社?」
 今度は大原常務が驚きの声を上げてきた。
 
「あ、はい、履歴書は省略しておりました」
 そう、必要は無いと想い、省略したのだ。

「そ、そうか…」

「えぇ、なんで秘書なんか?」
 すると今度は越前屋さんが驚いて、質問をしてきた。


「あ、ま、まぁ、色々とありまして…
 でも、それは越前屋さんも同じ様なものじゃないんですか?」
 
 そう越前屋さんは、まさかの国家のエリート官僚の道を蹴っているのだ…
 そっちの理由を知りたいくらいだ。

「あ、え、ま、まぁ…」
 すると、そんなわたしのツッコミに彼女は反論が出来ない。

 やはり、越前屋さんなりにも色々とあるのであろう…

「ま、まあ、とりあえずアレだな、そのプランナーの件の企画書は?」
 すると彼が、いいタイミングで話しの流れを変えてくれる。

「はい、自宅のパソコンの中にあります」

「じゃあ、明日色々と提案したり、教えてくれないか」

「はい」
 彼、大原常務はそんな越前屋さんの返事を聞きながら、わたしと彼女を交互に見つめてきていた。

 多分…

 彼女もわたしも…

 使える…と、思っている様な目をしていた。

 そう…

 わたしは…

 アナタの力になりたい…

 少しでも役に立ちたい…

 そしてアナタを手に入れる…

 いや、あの女…

 佐々木ゆかりから奪い、わたしだけの男にしたい…
 いや、するのだ。

 だからわたしは…
 
 秘書になった…

 決して山崎のおじさまの目付役では無い。


「大原常務、そろそろお時間ですが…」
  ふと、時計を確認すると、会議の時間であった。

 まずは、ちゃんと秘書の仕事をしなくては…


「あっ、そうか…
 じゃ、ちょっと席を外すよ」
 そして大原常務はそう呟き、席を立つ。

 時刻は午後3時…
 今度はこの生保会社内だけの役員会に出席する予定があったのだ。

「じゃあ、いってくる」
 そして大原常務は部屋を出た。




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