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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 37 佐々木ゆかりって?…

「そういえば…
 佐々木ゆかり部長兼新規プロジェクト室長さんてどんな方なんですか?」

「え、あぁ、佐々木室長さんですかぁ?」

「はい、わたし中途採用なんで存じ上げなくて…」

 わたしは嘘をつく…

「え…とぉ、見た事は?」

「はい、一度だけチラと…」

「あぁ、そうなんだぁ…
 うぅんとぉ…
 あの見た目通り美人さんでぇ…
 昔はなんかぁ『鉄の女』ってぇ、陰で呼ばれてたみたいですけどぉ」

「え…『鉄の女』ですか?」

「はい、ええとぉ、半年くらい前までのコールセンター部の課長時代らしいですけどぉ」

『鉄の女』とは、まるで堅物女のイメージがする…
 そして、イギリス元女首相のサッチャー女史だ。

「………」

「あ、なんか、仕事中はきびきびと、理路整然で、笑わなかった…みたいな… 
 でもぉ、今は凄く笑うし、その笑顔が素敵でぇ…」

「ふぅん…
 なんか大原常務とは長い付き合いらしいとか…」
 さり気なく訊いてみる。

「あ、はい、なんかぁ、約二年半くらいのお付き合いらしく…
 あっ、違いますよっ…
 お仕事上のコンビが二年半くらいらしいって事ですよぉ」

 そうなんだ…
 もう二年半近い関係なのか…

「えぇ、二年半なんだぁ…」

 わたしは驚くフリをして…

「じゃあ、そんな美男美女のお二人が二年半もなんて…
 だったらぁ?」
 ワザと少し大袈裟に、カマを掛けて訊いてみる。

 すると…

「ところがぁ、そんな噂が全然無いらしいんですぅ」

「え…そうなんだ」

「はい、わたしも少し興味があったんでぇ、本社側の方々に訊いてみたんですけどぉ…
 そんな雰囲気すら全くないって皆言うんでぇ…」

「へぇ、そうなんですかぁ」

 うわぁ、完璧に演じ切っているんだぁ…

「はい、そうなんですよ、だからわたしは余計に…あっ」
 小さく声を上げ、急に恥ずかしそうな顔をして下を向いた。

「あらあら、越前屋さんもですかぁ?」
 わたしは、敢えて彼女に合わせてそう言った。

「えっ?」

「わたしも大原常務さまは素敵だなぁって…」
 ここで越前屋さんと仲良く、親密になって損は無い。

「二人一緒ですね」
 と、わたしはにこやかに微笑んだ。




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