テキストサイズ

シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 48 律子の秘密(10)

 せいぜい、部長、もしくは役付きくらいに成れればいい位しか考えたことが無かった…

 だが、それが、現実的な限界だろう…
 と、そう思っていた。

「まぁ、とりあえず、もう少し律子の威信を利用させて貰うよ」

「はい、はい、おじいさま達のお好きな様に…
 わたしは…」
 律子はそう呟きながら、私を見て…

「わたしは、この大原さんと一緒に居られればそれでいいんですからぁ」
 と、穏やかな微笑みを浮かべ、そしてやや恥ずかしそうに言ってきたのである。

「あ、いや…」
 私、タジタジとなってしまう。

 どうして?…

 なぜに?…

 こんなに律子に好かれているのか?…

「ううん、ほら大原くん、この手の話しをすると律子はいつもこんな感じなんだよ…
 ま、キミも大したモンだがね」

「え?」

「ほら、こんな凄い存在の律子に、こうまで惚れられているんだから」

「あ、は、はあ…」

 確かにそうかもしれないし…
 そして私は恥ずかしくもあった。

「ま、キミのそんな出世欲の無欲さが、律子には良いんだろうがね」

「そうですわよ、おじさま…
 大原さんはおじさま達とは違って、無理無欲なんですからねぇ…」

 確かに、そこまでの出世欲は無かった…

「ま、大原くん、律子の秘密はこんな感じだから…」

「あ、は、はい…」

 いや、大変な秘密だ…

 そして、律子のミステリアスな面が、こんな所以からのせいなんだとも…
 よおく分かった。

「あ…でも、いつものアナタでいてくださいね…」
 律子はテーブルの下で、私の手を握りながらそう囁いてくる。

「あ、うん、もちろんさ…」

 だが、私は密かに胸が高鳴り、たかぶってきていたのだ…

 いや、こんな凄い話しを訊いて、高鳴り、昂ぶらない男はいない…
 と、は、思うのだが。

「ま、こんなカラクリだよ」
 と、山崎専務は話しを締めてくる。

「さあ、ママ、店に行こうか…
 あ、大原くんも来るか?」

「あ、いや、今夜は少し疲れてしまったんで…」
 帰りたかった。

「まあ、そうだな、大原くんにとっては、いきなりの話しと流ればかりだったかもしれないからなぁ」

「は、はい…」
 そう、朝から突然の常務就任の話しが始まりであったのだ。

「ま、明日からもまた忙しくなるから、今夜はゆっくりしたまえ」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ