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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 58 部長佐々木ゆかり(2)

「お疲れさま」
 わたしはコールセンター部の小会議室に入る。

「あ、お疲れさまっす」
「お疲れ様です」
 と、コールセンター部の営業課の
 杉山大輔と鈴木創(はじめ)の二人が待っていた。

「鈴木くんある程度内容は把握してるわよね?」

「はい大丈夫、バッチリです」
 わたしがそう問うと鈴木くんはそう応えてくる。

 それはそうなのだ…
 いくら杉山くんの父親絡みからの新規業務の案件とはいえ、売上金額もこれからの業務実績の規模もかなり見込まれる訳であり、ましてや後輩に営業成績を出し抜かれたカタチとなる訳であるから…
 さすがにもう遅れは取れない、という心境でもあるから、ここから挽回するしかないからだ。

「ほらわたしはこれからかなり多忙になるからさ、鈴木くんがわたしの後を引き継いでもらわないとね…」

 つまりわたしは、鈴木くんにチャンスを与えるカタチとなる…

「はい、大丈夫です」
 そして彼はそれを十分に理解していた。

「じゃあ昼食を兼ねてもう出掛けましょうか」
 会議は午後1時30分からなのだが、打ち合わせも兼ねて早目に出発する。

「ランチもお台場で食べましょうね」
 今日の最終会議は、杉山くんの父親が報道局長を務めるお台場のテレビ局なのだ。

「はい…」

「うわぁ、今日もかなり暑くなりそうね」
 コールセンター部のビルを出て、通りてタクシーを拾う。

 もうわたしはすっかり気持ちが、コールセンター部部長の佐々木ゆかりに切り替わっていた。

「お台場のテレビ局までお願いします」
 タクシーに乗り込むと、前の席に座った杉山くんが運転手に行き先を告げる。

 前に杉山くん、後部座席にはわたしと鈴木くんが座った…
 わたしは杉山くんが隣じゃなくて少しホッとする。

 なぜならお盆休み前の仕事の夜に、紆余曲折はあったのだが、この鈴木くんと鈴木くんの彼女と杉山くんの四人で食事をし、その後、事務所の部長室でのある意味、ハプニング的な出来事があったから…
 わたしはなんとなく気まずかった。
 (1303ページ〜参照)

 いや多分、杉山くんもその件についてはモヤモヤと燻っている筈であろうが…
 わたしは一切触れない事に決めていた。

 そして杉山くんも同じ想いであると思われたのだ…

 そう、あれは、真夏夜の夢として…



 

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