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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 59 部長佐々木ゆかり(3)

 そしてランチを兼ねて打ち合わせをし、お台場のテレビ局での最終的な会議を終わらせ、帰途のタクシーに乗ったのは午後4時過ぎた頃であった。

「もう杉山くんのお父様には大感謝だわぁ…」
 わたしはタクシーに乗るなり、杉山くんにそう言う。

「あ、は、はい、そうっすね」

「ホントよぉ、ほぼコッチの言い分の単価設定を呑んでくれてさぁ…
 それも赤坂と東京タワーのテレビ局にも合わせて全部まとめてくれてさぁ…」
 
 そうなのであった…
 元々が杉山くんの父親が持ってきてくれたいわゆる『アウトバウンド』という、コチラ側から仕掛ける業務なのだが…
 つまりこの秋に、恐らくは総選挙になるだろうという目論見もあり、そんなアンケート調査や、選挙調査の為のアウトバウンド的な業務委託を提案してくれたのだ。

 そして、横の繋がりのあるこの他社二つのテレビ局も…
 と、まとめて、可愛い息子の為にもなればと、ウチに託してくれる事になったのである。

「それにあの単価設定なら、本音はお釣りが出るくらいなのにぃ…」
 そう、杉山くんの父親が単価もまとめてくれていたのだ。

 だから、実際は、コチラ側からプレゼンしただけで、ほぼまとめ手くれたカタチなのである…

「本当にお父様には感謝だわぁ」

「ホントっす、オヤジには感謝っすよ」

「やっぱりバカ息子ほど、可愛いいのね」
 と、わたしは上機嫌で杉山くんをからかう。

 其れ位に楽な営業であり、驚くほどの実績になるのである…

 そしてこの営業成績と売上成績は、勿論杉山くんの成績にも繋がるのではあるが…
 何といっても、コールセンター部の統括部長としての立場のわたしの成績ともなるのであるのだ。

 これは、周りな新たな敵を作っているであろうわたしにとって、それらの敵を黙らせられる強力な武器となるのは明らかであった…

「そうなんすよ、それに、オヤジはかなりゆかり部長の事を気に入ったみたいで…」

「え?」

「嫁に貰うのはあんな部長みたいな美人でキレねある女性にしろよって…」

「あ、あら、そ、そうなのぉ」

「は、はい…
 もうそれは煩くて…」
 と、杉山くんは苦笑い、いや、照れ笑いを浮かべながら言ってきた。

「じゃあ、ある意味、ゆかり部長のおかげで間違いないですね」
 今度は鈴木くんがそう言ってくる。


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