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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 60 部長佐々木ゆかり(4)

「あ、は、はい…
 もうそれは煩くてぇ…」
 と、杉山くんは苦笑い、いや、照れ笑いを浮かべながら言ってきた。

「じゃあ、ある意味、ゆかり部長のおかげで間違いないですね」
 今度は鈴木くんがそう言ってくる。

「あ、そうだ鈴木くん…
 松山美咲ちゃんの正社員雇用の件も…」

 そう、鈴木くんの彼女である松山美咲ちゃん…
 彼女はこの『アウトバウンド』業務の数少ない経験者であり、マニュアルも作成できるほどの経験値があると云っていたから、この前の食事の時にその正社員雇用の可能性を、わたしは示唆していたのだ。

「あ、はい…」

「わたしがコールセンター部の全権を委任されているから、近いウチに面接するから、正式に話してくれていいわよ」

「は、はいっ」
 
 そう彼女は派遣契約社員であるが…
 先の蒼井美冴さんの様に、正社員雇用制度を適用するつもりであった。

 いよいよ、コールセンター部の新規業務も正式に発進をする…

 そして…
「あ、そういえばキミ達は本社の秘書課には知り合いいない?」
 ずっと胸に、いや、心の奥に燻っている想いを訊いてみる。
 
「え、あ、秘書課に同期、いや、大学も一緒の知人いますよ」
 と、鈴木くんがすかさず応えてきた。

「あら、そうなの」

「はあ、はい…」

「じゃぁ連絡は?」

「え、と、確か携番変わってなければ取れると思いますが…」

「うん…いや、その…」
 わたしは必死に適当な理由を脳裏に想い浮かべていく。

「あ、あのね…
 ほら、今度、大原統括本部長が向こうの保険会社の常務に就任したじゃない…」

「はい、あの若さですごい出世ですよねぇ」

 確か鈴木くんは、彼と同郷で同じ出身大学だと云っていた…

「その常務専任の秘書さんも、本社の秘書課からの出向就任だって聞いたから…
 今後の為にもちょっと気になって…」

 咄嗟の思い付きだったから、都合良いウソは浮かばなかったが…
 まあ、なんとか不自然さは無いような気がするのだが。

「ほら『新規プロジェクト』の兼ね合いもあるからさぁ…」
 なんとか最もらしい理屈を並べる。

「あ、そうですよね、ゆかり部長は
『新規プロジェクト』の準備室長でもあり、大原常務が最高責任者には変わりないですもんね」




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