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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 63 準備室室長佐々木ゆかり(1)

 コールセンター部に到着すると…
「ゆかり部長、赤坂と東京タワーのテレビ局は、明日の午後イチからになりました」
 と、杉山くんが言ってきた。

「あ、そう、わかったわ…
 もう単価も契約も決まったから、一応、わたしは明日は挨拶がてら行くけれども、後は鈴木くんと二人に任せるわね…」

「はい、了解っす」
 杉山くんがいつものノリで返事をする。

「アッチもさぁ、いよいよ本格始動だからさ」

「はい、頑張ります」

「あ、そうだ、近いうちに契約決定のお祝いでもしようか」

「はい、楽しみにしています…
 あと…」
 鈴木くんがそう返事をしながら最後に訊いてくる。

「え?」

「あのぉ、山中さんも…」

「あ、うん、山中くんが?」

 そう、コールセンター部の営業課にはもう一人、29歳の山中正史という課員もいる…

「あ、もちろん山中くんと三人でどんどん進めていいわよ」

「はい、なんか山中さんもコレが決まったら、デカい契約取れるって…」

「あら、そうなの?」

 実はその山中くんにはわたし個人が別命でこれから始まる『アウトバウンド』の業務の主な資料集めを頼んでいたのだが…
 本来はこのコールセンター部の三部署全ては『インバウンド』といわれる、お客様から掛かってくる受け身の形態の業務なのだが、今回決まった『アウトバウンド』といわれる新業務は、アンケート調査等の、コチラ側から電話調査を仕掛ける業務である。 

 そしてこのコールセンター部では経験の無い初めての業務でもある訳で…
 だから契約している数社の派遣会社に対してこの『アウトバウンド』経験者を優先的にしてもらう依頼と共に、マニュアル作成も重要で、その資料集め的な全ての事柄をわたしが個人的に山中くんに別命で頼んでいたのだ。

 その山中くんが、この『アウトバウンド』業務の新たな、しかも大きな契約を取ってくるらしいという…
 早くも、一番年下の杉山くんが大きな契約を取ったという相乗効果の現れと云えるであろう。

「あら、それは素晴らしいわね…
 ま、それはおいおいで…
 さぁ、今日はもう上がりなさい」
 と、わたしは彼らの帰社を促した。

 また明日があるのだから…





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