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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 139 ルームシェア

 越前屋さんの叔母様の居酒屋で、決起集会の下見と予約を兼ねて五人で飲みながら、話しの流れで伊藤敦子さんをわたしのマンションの空いている部屋でルームシェアさせる話しになり、ほぼまとまってきていた。

 そしてわたしも自身も、一緒にシェアすれば公私を含めてきっと良い方向にいくかもと…
 本当にそう思えてきていた。

 すると…
「ええ、本当に甘えてもいいんですか?」
 と、下を向き思案していた伊藤さんが顔を上げ、気持ちを決めた様にわたしを見ながらそう言ってきたのだ。

「うん、構わないわよ…
 それに多分、わたしの生活と伊藤さんの生活時間がかなりズレたりして違うから、わたしの居ない時間は好きに過ごしてもらって構わないし…」

 そう、わたしはこれからかなり多忙になるから…
 平日はあまり彼女とはブッキングしないと思われる。

「あ、はぁ…」

「それにシェアのルールはおいおいに決めればいいし…」

「いいんじゃないの」

「そうよぉ、あっちんいいなぁ」
 と、美冴さんと越前屋さんも言ってきた。
 

「じゃあ、とりあえずマンション見つかる迄という事で、お邪魔させてもらいます…」
 と、伊藤さんが言ってくる。

「うん、じゃあ決まりね…
 さっそく今夜から来る?」

「あ、いえ、荷物がえつの家にあるから、できれば明日からで…
 ま、荷物っていってもトランク一つなんですけど…」
 
「え、トランク一つなの?」

「あ、はい、マンション解約のタイミングでロサンゼルスの両親の家にしばらく住むつもりだったんで、ほぼ処分しちゃたし…
 暫くはホテルステイのつもりでしたから…」

 多分伊藤さんは、キリっとした見た目通りのサッパリとした、そしてパッと切り替えができる性格なのだろう…
 彼女のそんな話しを訊いてそう思う。

「じゃあ、明日からよろしくね」

「は、はい、こちらこそ、色々甘えちゃってすいません」

「ううん、そんな事ないわ…
 なんか、いや、なんとなく少し楽しみだわ…」
 
 そう、どうせ彼、大原浩一新常務との逢瀬はいつものあのホテルが殆どだし…

 それにこれから暫くは、わたし達はかなり多忙になり逢える時間もままならない日々が続きそうだし…

 だから伊藤さんとのルームシェアが、彼と逢えない夜の寂しさを少し紛らわせられるかもしれない。




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