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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 143 深夜の電話

 ブー、ブー、ブー、ブー…

 は…

 わたしは枕元に置かれている彼の携帯電話のバイブレーションの震動に気付き、目覚めた。

 え…
 
 そしてふと傍らに目を向けると彼が寝ていた。

 あぁそうか、わたしは彼に抱かれ、愛されながら寝落ちしてしまったんだ…

 一瞬の内に完全に覚醒し切っていない思考で、そう想い浮かべた。
 
 ブー、ブー、ブー、ブー…

 そして今、彼の携帯電話が着信のバイブレーションで震動している。

 あぁ、あの人の…

 あの女からの…

 あの佐々木ゆかりからの着信だ…

 いや、間違いない…

 午前1時35分…

 こんな時間の着信だから絶対にそうだ…

「………ぁぁ……ぅ……ぅぅ………」

 すると傍らで寝ている彼が、そのバイブレーションの震動に気付き…

 おぼろ携帯ながら覚醒し始めてきた。


 こんな時間に…

 あの夜もそうだった…

 こんな深夜に電話なんて…

 わたしなんかどんなに寂しくたって深夜の電話はガマンしているのに…

 それもこの二人の過ごしている時間に…

 このベッドの上で…

 わたしとあの人の間に…

 割り込んでくるなんて…

 わたしは一瞬の内にそんな想いを゙浮かべてしまい…

 そして…

 イラついて…

 いや、怒りかもしれない…

「う…ぅぅ…ぁ……あぁ…………」

 彼のアタマがゆっくりと動き、携帯電話に向いた。

 ダメっ…

 ダメっ、出させない…

 わたしは無意識に、そして一瞬彼よりも速く…

 携帯電話を掴み…

 そして…

 これは本当に無意識であった…

 バイブレーションに震える携帯電話の電源を…

 切ってしまったのだ。

 本当に無意識であった…

 ただ…

 ただ、このわたしの部屋で…

 この二人のベッドの上で…

 彼女の…

 佐々木ゆかりの…

 あの存在感を…

 いや、彼と話しを、会話を…

 させたくは無かったのだ…

 彼女の存在感をこのベッドの上で感じたくは…

 ううん…

 許せなかったのだ。


「あ…」

 彼はそんなわたしの動きに…

 そんな声を漏らし…

 そしてわたしの顔を見つめてきた。

「………………」

「………………」

 わたし達は見つめ合う…





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