シャイニーストッキング
第12章 もつれるストッキング1 松下律子
152 朝の想い
「…………う、うん……ふぅ………」
「あ、ごめんなさい、起こしちゃいましたね」
ふと、意識が還り、まだ覚醒しきっていない脳裏に…
律子特有の、いや、私が個人的に大好きな彼女の甘い声音が心を震わせてきた。
「あ、う、うん、いや…」
ふと枕元の時計を見ると…
午前6時を少し過ぎた時間であった。
「あ、わたしは8時出勤なので…
まだもう少し寝てらして…」
律子がベッドから立ち上がりながら、そう言ってきた。
「あ…そうか…」
そうなのだ、律子は昨日から私の秘書としての正式な本社からの出向社員の身分なのだった…
そして私は常務という重役、役員であるから出勤時間は基本的には9時…
また、その時の予定、状況によってはある程度、自由自在にできる立場であるのだ。
「はい、だからまだ全然寝てらしてくださいな」
「あ…う、うん」
「コーヒーと朝食だけは用意しておきますね」
「ありがとう」
私はそう応えながらも上体を起こし、ベッドサイドのテーブルの上のタバコを手に取り、咥え、火を点ける。
「ふぅぅ…」
そしてひと息つく。
「あら、起きるの?」
リビングでコーヒーを煎れながら律子が訊いてきた。
「あ、うん、一度帰って着替えようかなってさ…」
「あら、着替えならありますのに…」
そうなのだ、この律子の部屋には男物のスーツ一式が何着もあるのだ…
そして、それはおそらくは、例の亡き『経営の神様』である彼女の祖父の忘れ形見のスーツであろうと推察される。
だから、少し、気後れしてしまうのだ…
「あ、うん、だがいい…
それに家から持ってきたいモノがあるから」
そんな意味もあるのだが…
実は、もう一つの意味もあった。
それは…
律子の淡い香水の残り香の事である。
今日もしかして…
万が一…
ゆかりに会うかもしれない…
いや、昨夜のあの電話の件もあるし、色々と仕事の話しも現実的には立て込んでいるのだ…
ゆかりが来訪、または、コールセンター部に呼ばれ、顔を出さなくてはならない可能性がゼロでは無いと予想されるのだ。
いや、多分、間違い無い…
そんな気がするのである。
だからそんな時に、律子の残り香をゆかりに察知される訳にはいかないのだ…
「…………う、うん……ふぅ………」
「あ、ごめんなさい、起こしちゃいましたね」
ふと、意識が還り、まだ覚醒しきっていない脳裏に…
律子特有の、いや、私が個人的に大好きな彼女の甘い声音が心を震わせてきた。
「あ、う、うん、いや…」
ふと枕元の時計を見ると…
午前6時を少し過ぎた時間であった。
「あ、わたしは8時出勤なので…
まだもう少し寝てらして…」
律子がベッドから立ち上がりながら、そう言ってきた。
「あ…そうか…」
そうなのだ、律子は昨日から私の秘書としての正式な本社からの出向社員の身分なのだった…
そして私は常務という重役、役員であるから出勤時間は基本的には9時…
また、その時の予定、状況によってはある程度、自由自在にできる立場であるのだ。
「はい、だからまだ全然寝てらしてくださいな」
「あ…う、うん」
「コーヒーと朝食だけは用意しておきますね」
「ありがとう」
私はそう応えながらも上体を起こし、ベッドサイドのテーブルの上のタバコを手に取り、咥え、火を点ける。
「ふぅぅ…」
そしてひと息つく。
「あら、起きるの?」
リビングでコーヒーを煎れながら律子が訊いてきた。
「あ、うん、一度帰って着替えようかなってさ…」
「あら、着替えならありますのに…」
そうなのだ、この律子の部屋には男物のスーツ一式が何着もあるのだ…
そして、それはおそらくは、例の亡き『経営の神様』である彼女の祖父の忘れ形見のスーツであろうと推察される。
だから、少し、気後れしてしまうのだ…
「あ、うん、だがいい…
それに家から持ってきたいモノがあるから」
そんな意味もあるのだが…
実は、もう一つの意味もあった。
それは…
律子の淡い香水の残り香の事である。
今日もしかして…
万が一…
ゆかりに会うかもしれない…
いや、昨夜のあの電話の件もあるし、色々と仕事の話しも現実的には立て込んでいるのだ…
ゆかりが来訪、または、コールセンター部に呼ばれ、顔を出さなくてはならない可能性がゼロでは無いと予想されるのだ。
いや、多分、間違い無い…
そんな気がするのである。
だからそんな時に、律子の残り香をゆかりに察知される訳にはいかないのだ…