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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 156 朝の電話…

『留守番電話サービスに接続します…』

 あれ?…

 朝、出勤途中のタクシーの中から、彼に三回続けて電話発信をしたのだが…
 どうやら、電源が入っていないみたいなのだ。

 今まではこんな事は無かった…
 いや、昨夜みたいに呼び出し中に電源が切れたみたいになった事が無かった。

 何かがあった?…

 起きた、起きているんだろうか?…

 ザワザワとした騒めきと、少しの不安な胸騒ぎがしてきていた。

 きっと昨夜のわたしの電話がタイミング悪く、慌てて電源を切り、そして、そのままにしているに違いないわ…

 冷静に考えれば、そう想えるのだが…

 だけど…

 だけど…

 心がザワザワと騒めき、胸騒ぎがしてくる。

 どうしようか?…

 わたしはタクシーの車窓から流れる外の景色を眺めながら考えていく。

 なんとなく声が聞きたかっただけなんだけど…

 こんな状況になっているから、気になって仕方がない。

 どうしようか?…

「あ、そうだ」
 わたしはふと閃き、保険会社の秘書課の直通電話番号をプッシュする。

 あ、でもまだ、出勤前か?…

「おはようございます、○△生命秘書課の田中です」

 あ、出た…

「あ、ぁ、ぉ、おはようございます、あ、あのわたし新規プロジェクト準備室室長の佐々木ゆかりと申します、朝早くからすいません…」
 わたしは慌てて話していく。

「あ、佐々木室長様、初めまして、秘書課課長の田中と申します」
 丁寧に対応してくれる。

 そしてわたしは咄嗟のウソを…

 緊急の面談予定があるんで大原常務の予定を確認したい…
 と、告げた。

「はい、かしこまりました、では大原常務専任の秘書から折り返しさせます…」

 そんな会話を…
 アポを取り付けて電話を切った。

「ふぅぅ」
 わたしはドキドキしてしまう。

 だけど咄嗟だったが、もっともらしいウソを…
 いや、半分はウソではない理由だから違和感は無い筈だ。

 よし、これで正々堂々電話を待てる…

 わたしはタクシーの中で少しホッとする。





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