テキストサイズ

シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 157 秘書さんの声…

 午前8時20分
『新規プロジェクト準備室』に出勤した。

「おはようございます、佐々木室長、ちょうど電話入ってます」
 と、電話を受けた伊藤敦さんがわたしに言ってきた。

 ドキン…
 わたしはそんな伊藤さんの顔を見た瞬間に、心が震え、少し動揺してしまう。

 あ、わたし、そうだわ…
 そして脳裏には昨夜の一人慰みの、あの絶頂感にイク瞬間にこの伊藤敦子さんの顔を想い浮かべた事を思い出したのだ。

「あ、ありがとう…」
 わたしは一気にドキドキと高鳴りながら電話を受け取る。

 そして、必要以上に、不自然なくらいにその秘書さんを意識してしまっていたから…
 その秘書さんからの電話には、余計にドキドキと高鳴ってしまう。

「も、もしもし佐々木です」
 
「おはようございます、わたくし大原常務専属秘書の松下です…
 昨日は失礼しました…」

 あの甘い響きの…
 そしてすかさず昨日の彼との電話の切り際に割り込んできた非礼を詫びてきたのだ。

 予想外の対応に、わたしの心の動揺は更に揺れてしまう…

「え、あ、い、いや…」
 
「ええと、大原常務様の御予定の件ですね?」

「あ、は、はい」

「大原常務様とは直接のご連絡は?」
 すると、秘書の松下さんがそう訊いてきた。

「あ、は、はい、朝に何回か携帯に電話したんですが、どうやら電源が入ってないみたくて、繋がらないんです」

「はぁ、そうなんですかぁ…
 あ、昨日は直接携帯電話でお話しされていたみたいでしたから…」

「は、はい、今日、急ぎの面談と業務の進捗状況の説明がしたくて…」

「かしこまりました、一応、大原常務様は午前中空いておりますが、9時過ぎに出勤なさるんで、確認しての折り返しでもよろしいでしょうか?」

「は、はい、お願いします」

「あ、じゃあ、一応、佐々木室長様の携帯番号を伺ってもよろしいですか?」

「はい、え、090……………………です」

 そして、折り返し貰うという事で電話を切った。

「ふぅぅ」
 わたしは電話を切った後、なぜか緊張してしまったせいでそうため息をついてしまう。

 そして、耳元の奥には、澄んだ、甘い
響きの松下さんという秘書さんの声の余韻が漂っていたのだ…

 なんて甘い響きの声なんだろう…

 なぜかまた再び、心がザワザワと騒めいてきていた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ