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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 158 佐々木ゆかりとの会話

 午前8時20分…
 わたしは『新規プロジェクト準備室』に、佐々木ゆかり室長宛に電話を掛ける。

 すると…
 「もしもし佐々木です」
  電話口からなんとなく澄んだ、よく通る感じの声が聞こえてきた。

「おはようございます、わたくし大原常務様の専属秘書の松下です…
 昨日は失礼しました…」
 わたしはすかさず、昨日の彼との電話の切り際に割り込んだ非礼を詫びる。

「え、あ、い、いや…」
 逆に、それが彼女の動揺を゙生んだのか、声が震えて聞こえてきた。

「ええと、大原常務様の御予定の件でしたわよね?」

 そしてわたしは一気に攻めていく…

 そう、なんとなくわたしの心の中には、彼女、つまり佐々木ゆかりに対しては毅然に、強くありたいという思いがあった、いや、湧いてきていたから。

「あ、は、はい」

「大原常務様とは直接のご連絡は?」

 そして、確かめたいこともあったから…

「あ、は、はい、朝に何回か携帯に電話したんですが、どうやら電源が入ってないみたくて、繋がらないんです」

「はぁ、そうなんですかぁ…
 あ、昨日は直接携帯電話でお話しされていたみたいでしたから…」

 うん、やっぱり、昨夜、わたしが電源を切ったままみたい…

「は、はい、今日、急ぎの面談と業務の進捗状況の説明がしたくて…」 

 だから電話が繋がらなくて、彼女は動揺し、わたしに、いや、秘書課に探りを入れる意味でのこの電話なんだろうと思われた…

「かしこまりました、一応、大原常務様は午前中空いておりますが、9時過ぎに出勤なさるんで、確認しての折り返しでもよろしいでしょうか?」

 わたしはあくまで毅然に、そして上から、そう答える…

「は、はい、お願いします」

「あ、じゃあ、一応、佐々木室長様の携帯番号を伺ってもよろしいですか?」

「はい、え、090……………………です」

 そして折り返し電話をするという事で、彼女の携帯番号をゲットする…
 後でも、いくらでも、調べられるのだが、なぜかわたしの心が欲したのだ。

「では、失礼します…」

 わたしは電話を切り…

「ふぅぅ」
 と、ため息をつく。

 かなり動揺しているみたい…

 まずは先手を切れた…

 別に彼女、佐々木ゆかりと直接遣り取りを交わして、彼、大原浩一を奪い取るつもりは無いのだが…

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