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シャイニーストッキング

第12章 もつれるストッキング1   松下律子

 159 嫉妬…

「では、失礼します…」

 わたしは彼女、佐々木ゆかり準備室室長との電話を切り…
「ふぅぅ」
 と、ため息をついた。

 やはり彼女はかなり動揺しているみたいね…
 まずは先手を切れた。

 わたしは別に彼女、佐々木ゆかりと直接遣り取りを交わして、彼、大原浩一を無理矢理に奪い取るつもりは無いのだが…
 なぜか、いや、なんとなく女として、彼女より常に優位にいたいのだ。

 決して争う気持ちは無い…

 あくまでも彼の心を魅了し、惹きよせ、魅きよせ、心を移させるつもりではあるのだが…

 なぜか奪うと決めた時からどうしてもムキになってしまうみたい。

 慌てるなわたし…

 慌てるな律子…

 わたしはそう自分の心に言い聞かせ、逸る気持ちを、彼女との会話により昂ぶってしまった気持ちを押さえていく。

「ふぅぅ…」

 そして吐息を吐いて…

 一応、彼の携帯電話に掛けてみる。

 プルプルプル…

 あ、繋がった…

 時刻は午前8時30分過ぎ…

 さすがに電源に気付いたみたいであったのだが…

 今度は彼が着信に気付かないのか、なかなか電話に出ない。

 そして留守番電話にもならない…
 ていうことは、キャッチ機能があるから、今、通話中なのか?

 だから、呼び出し音のままなんだ。

 え、じゃ、もしかして、今彼は、彼女、佐々木ゆかり室長と、彼女の着信に気付いて話しているのか?…
 今度はわたしが急に、ザワザワと心を騒つかせてしまう。

 いや、間違いないだろう…

 おそらくは今はもう、出勤途中のタクシーの中に違いない…

「あぁぁ…」
 わたしは思わず声を゙漏らし…
 そして、その自分の声に気付いた。

 あ、いやだわ…

 もしかしてわたしは嫉妬しているのか?…

 彼が、あの彼女と話しているというだけで…

 まさかわたしは嫉妬をしている?…

 そんな、昨夜、彼の強いわたしに対する気持ちを確認し、確信し、今朝はあれほど自信に満ちていた筈なのに…





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